事例 ~みなし解散と会社の継続~

みなし解散とは

最後の登記(登記事項証明書の取得や印鑑証明書の交付などは含みません。)から12年を経過している株式会社(休眠会社)に対して法務局が整備作業として法務大臣からの官報公告と各管轄の法務局からの個別通知を行ったうえで、2ヶ月以内に事業廃止の届け出や役員変更登記等が成されない場合、職権で解散登記をすることをいいます。
会社法第472条により定められており、平成26年から全国の法務局において休眠会社及び休眠一般法人の整理が毎年行われるようになりました。

会社の継続とは
一定の事由により解散した会社が、株主総会の特別決議により、解散前の状態に復することです。
みなし解散の登記がなされた会社に関しては、その後3年以内に限って、会社の継続をすることができます。

事例
みなし解散の登記がされてしまった神戸のある株式会社さんからご相談を頂きました。みなし解散の登記後3年以内であったため、株主総会での『会社の事業を継続する』という特別決議により継続可能な状態でした。
さっそく登記簿をみなし解散以前の状態に戻して、営業再開できるように準備に取り掛かりました。

以前のように会社継続登記、みなし解散時の清算人就任と継続後の役員等の登記だけでは済まないところが、とにかく大変な部分です。

ご依頼いただいた会社の場合、実際の手続き内容は以下の通りとなりました。

【登記の手順】
①清算人及び代表清算人就任
法定清算人就任の登記には清算人の定めがないという証明のために定款添付

②清算人の変更
議事録の署名者数の減少のために一部の法定清算人には辞任をしてもらった

③会社継続
株主総会の特別決議によるので株主リストが必要

④株券を発行する旨の定めの廃止
平成18年5月1日施行の新会社法で定款に株券を発行する旨の定めがあると見做され    て、その登記が職権でされていた。
定款を変更して株券を発行する旨の定めの廃止とその登記が必要であった。
「株券を発行する旨の定め」年月日廃止
株式の全部について株券を発行していないことを証する書面 添付

⑤株式の譲渡制限に関する規定の変更
一番簡便な会社形態(旧有限会社タイプ)にするために、取締役会が存在しない。
みなし解散時には取締役会設置会社の旨の登記は職権朱抹されているが、その廃止を    正式に決議しておく。
「株式の譲渡制限に関する規定」
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。年月日変更

⑥監査役設置会社の定めの廃止
監査役を置かないので監査役設置会社である旨の定めの廃止決議をしておく。
「監査役設置会社に関する事項」年月日廃止

⑦取締役、代表取締役及び監査役の変更
会社が営業状態に戻ったことにより、清算人は自動失職。新たに取締役・代表取締役    を選任する。
従来の監査役は、権利義務承継で本来の任期10年にあたる平成24年で退任登記。
※監査役設置会社の定めを廃止した日ではない。従って、平成27年の会社法の一部改正によ る「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨の登記」 は不要 
  →別のご依頼で、「会計限定監査役の定めがある旨の登記」手続きを行った際の事例はこちら 

みなし解散により印鑑カードが失効しているので、印鑑カードを発行してもらう必要があることを忘れないように!

【登録免許税】
登記の種類 区分 免許税
①清算人及び代表清算人就任       24(四)イ 9,000円
②清算人の変更             24(四)ニ 6,000円
③会社継続              24(一)ソ 30,000円
④株券を発行する旨の定めの廃止
⑤株式の譲渡制限に関する規定の変更
⑥監査役設置会社の定めの廃止
24(一)ツ 30,000円
⑦取締役、代表取締役及び監査役の変更  24(一)カ 10,000円
合   計   85,000円
ひとこと
このように、みなし解散となった会社の継続登記は、司法書士でも悪戦苦闘です。お手続が必要な方は、是非司法書士にご相談いただくのがスムーズな方法かと思います。
なお、継続登記をせずに3年が経過すると、職権による「清算結了登記」がなされ、会社の存在自体が完全になくなってしまいます。ある日気づいたら会社がなくなってしまっていたということにならないよう、早めにご対応頂くことをお勧めいたします。