事例 ~不在者財産管理人選任~

不在者財産管理人選任とは
従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合、家庭裁判所は、申立てによって不在者自身や不在者の 財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため、財産管理人選任等の処分を行う ことができます。選任された不在者財産管理人は、不在者の 財産を管理、保存するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって、遺産分割・不動産の売却等を行うことができます。

事例
依頼者Aさんは4人兄弟の次女。未婚で子どももいなかった弟のBさんが亡くなり、Bさん所有の土地や建物等の相続手続きを行おうとしていた。両親も亡くなっているため、相続人は兄弟となるが、長男Cさんは数年前から行方不明で連絡がとれなかった。fuzaishazaisankanrinin
Bさん名義の相続手続きを行うには、Aさんと行方不明のCさんを含めて3人の兄弟間で遺産分割協議を進めなければらないが、Cさん不在により手続きが中断してしまい、当方に相談に来た。
当方は、行方不明者Cさんに不在者財産管理人を立てて、遺産分割協議を行うことを提案した。
依頼者Aさんは不在者財産管理人選任の申立てを行い、財産管理人を選任した。その後「不在者財産管理人の権限外行為」の許可を申立て、遺産分割協議を進めた。
遺産分割協議では現金・預貯金・株券等は兄弟3人で3分の1ずつ、土地・建物は行方不明のCさん以外が相続し、Cさんにはその評価額から算出した代償債務を相続した兄弟が支払うこととなった。
 
ひとこと
こうして、Cさんの所在が分からないがために膠着していたBさんの遺産分割協議は無事に終了しました。不在者財産管理人を立てたことによって、不動産の名義を変更することができたので、その後売却することになったとしても、手続きが円滑に進められます。 しかし、遺産分割協議では、不在者Cさんの法定相続分を確保したものでなければ裁判所に認められないため、Cさんの相続分を確保したうえで、不在者財産管理 人が以後責任を持って管理していくこととなります。定期的に不在者の財産状況の報告を求められることもあるので、遺族が選任された場合には負担が続くことになるかもしれません。 遺族に無駄な負担を掛けないため、そして相続手続きをスムーズに進めるためにはやはり遺言書を作成しておくことも一つの方法です。